Interview with Mr. Kohara and Mr. Fukuma point 0 marunouchi 入居者インタビュー #6 【アサヒビール株式会社 古原 徹さん / パナソニック株式会社 福間 健悟さん】

point 0 marunouchi入居者インタビュー6回目は、アサヒビール株式会社の古原 徹さん(以下、古原さん)と、パナソニック株式会社の福間 健悟さん(以下、福間さん)にインタビューしました。
森のタンブラー開発の経緯やこれからやっていきたいことなどをお伺いしました!

<まずは自己紹介をお願いいたします!>

古原さん:
東北大学工学部修士前期出身で、週の4日は国分町で飲んでいました!そのころから人と飲むのが好きです。
大学2年生のときにサーフィンとスノーボードのサークルを立ち上げ、卒業時には100人ほどの規模のサークルになりました。
サーフィンもスノーボードもそんなに好きなわけではなかったのですが、モテるかなと思って始めました(笑)
初めてみたらかなりハマって、海と山ではストイックに練習していました。
あとは、子供の頃から人と何かを作り上げるのが好きです。

福間さん:
九州工業大学出身で、専ら体育会のテニス部の活動を一生懸命頑張っていました。
テニスは小学生の頃から大学生までずっと続けていました。

<お二人とも理系出身なのですね。そういった領域に興味を持ったきっかけは何かありますか?>

古原さん:
理系の方が就職が良いと先生に言われたからです(笑)
というのは半分冗談で、もともと図画工作的なモノづくりが好きだったのもあります。今の仕事では小さい頃と同じようにまずは自分で作ってみる、いじってみるようなこともやっていますね。
当時は粗大ゴミ置き場に置いてあった大きい装置をドライバーで勝手に分解したりしていました。迷惑ですね(笑)

福間さん:
古原さんは物いじりが好きで、大学では人を集めて新しいサークルを立ち上げて、今でもそれが仕事に繋がっているのが立派ですね。
私が工業大学に進学した理由は、「耐久性と打球感の備わったテニスのガットを開発したい」という思いからです。テニスのガットは2日〜3日ですぐに切れるにも関わらず、一回張り替えると数千円かかり親に迷惑かけていたので、もっと良いガットがあったらいいのにと思っていたからです。

<そうだったのですね。どういった経緯で今のお仕事をされているのでしょうか?>

古原さん:
当時就職活動をしていた頃は、消費者が見て、手に取れるわかりやすいモノの開発がしたいと思っていました。その中の一つがパッケージ開発です。
アサヒビールから内定をいただいた際、研究所の見学をさせてもらいました。実際にどのようにパッケージ(その時はPETボトル)が設計され、試作され、量産展開されていくのか、イメージできたことが入社のきっかけです。
もともとアサヒ飲料に8年間いて、清涼飲料のパッケージを担当していました。
自分が開発したペットボトルのパッケージがグッドデザイン賞を取ったこともありました!エントリーシートに書いたことが実現できたので嬉しかったです。
アサヒビールに来てからは3年で、今はパッケージング技術研究所という酒類容器包装の部署にいます。

福間さん:
少しお恥ずかしいのですが、パナソニックに入った動機は大企業ならではの「地図や歴史に残るような仕事をしたい」ということでした。もともと新卒から営業系に従事してましたが、社内の人事異動で現在はビジネスソリューション本部というところに所属しています。
パナソニックはオリンピック・パラリンピックのワールドワイド公式パートナーです。アサヒビールさんとはパートナー企業同士の繋がりでお近づきになりました。

<それでは、お二人が開発に関わった森のタンブラーとはどのようなものですか?>

古原さん:
森のタンブラーはソーシャルプロダクツです。ソーシャルプロダクツとは、生活者や社会のことを考えて作られた商品、またはサービスのことを指し、持続可能な社会の実現に貢献するもののことを言います。我々のような最終製品メーカーがSDGsを達成するためには、ソーシャルプロダクツを売るのが貢献の形としても合っていると思っています。

森のタンブラーで解決したい問題は、使い捨てプラスチックの削減です。
それだけでなく、間伐材のような地域の素材を活用したオリジナルの森のタンブラーを作ることで地域への愛着やにぎわいが生まれ、森林保全にもなります。リデュースを義務的に押し付けるのではなく、生活者が気負わず自然と取り組めるようなコミュニケーションを意識しています。
日本が苦手としているパートナーシップや協業も、コップという身近な存在がHUBとなることによって取り組みやすくなるのではないかと思っています。これはSDGs目標の17番にあたります。

<森のタンブラーはどういった経緯で開発をすることになったのでしょうか?コップを作ること、協業すること、どちらが先に決まっていたのですか?>

古原さん:
使い捨てのパッケージの開発をずっとしてきた私ですが、視点を変えて、使い捨てしないコップを作ろうとしていました。サステナブルで魅力的な素材を探していたタイミングでパナソニックさんに良い素材を紹介してもらい、パナソニックさんと一緒にコップ作りを行うことにしました。

福間さん:
新しい協業ネタを模索していた頃、両社で技術やアイデアを出し合う技術交流会を開催しました。いくつか素材系の先進技術を披露しました。その中で特に興味を持ってもらったのが、「セルロースファイバーを混合した樹脂素材」でした。
その打合せの場に参加されていた古原さんから、「この素材を使ってタンブラーを創りませんか?」とご提案頂いたことが森のタンブラー共同開発のきっかけでした。

<そういった経緯で一緒に森のタンブラーを開発することになったのですね。実際の開発で大変だったことはありましたか?>

福間さん:
たくさんありました!(笑)
例えば、森のタンブラーは原料である木材由来の甘い香りがするのですが、飲料用カップの素材に匂いが残ることは、アサヒビールさんの飲料商品の邪魔をするので受け入れて頂けないだろうと思っておりました。
そこはアサヒビールさんの中でも当然賛否両論あったはずだと思いますが、この香りを肯定的に受け入れて頂き飲料用カップとしての商品開発が進んでいきました。

古原さん:
私はビール造りについては素人ですが、甘い良い香りだったので、スーパードライに使っても問題ないと思っていましたが、社内のビールのプロたちに飲ませるときはドキドキしました。
カラメル香はビールにもポジティブな香りなので、良いねと言ってもらえました。コップは無味無臭であるべきである、というバイアスを崩した瞬間でもありました。

福間さん:
そうやって言ってもらえてよかったです。
また、ファーストサンプルが完成したときにアサヒビールの研究所近くの居酒屋でスーパードライを注いで乾杯&お披露目会を行いました。そのときに注ぐだけできめ細かいふわふわの泡がたち、パナソニック側はとても驚いた事を覚えております。
アサヒビールの皆様も注ぐだけで綺麗な泡がでると盛り上がってくれました。

後から聞いた話だと、古原さんは綺麗な泡ができると予想されていたのだそうです。なぜなら、セルロースファイバー樹脂は植物繊維を混合しているので表面に微細な凹凸が現れ、炭酸を刺激し泡立ちが良くなるからです。

古原さん
アサヒビールが大変だったことは、もともと酒類製造販売が専門であってコップ屋ではないということでした。
今でこそソーシャルプロダクツとして、販売を通してSDGsに貢献すると決まっていますが、それまでは中味(ビール)とセットが当たり前(コップは無償)という考え方なので、盛り上がってもどの部署も引き取らないよなと思っていました。いまでこそ、新規事業的に何でも自分でやっていますが、社内でそういうモデルケースがなかったので、手探りでした。今は本社中心に仲間が増えてきていて、森のタンブラーによるSDGs貢献をみんなで語っています。
「それは研究所の仕事なの?」と言われることもありましたが、当時会話した社外の方が「それは最高の誉め言葉だよ」と言ってくれたのが印象に残っています。正直、非常に忙しいですが、ライフワークとして楽しんでやっています。

<それでは最後に、今後どんなことにチャレンジをしていきたいですか?>

古原さん:
ローカルSDGsの観点で色々なことをやっていきたいです。先日、愛知県豊田市の間伐材を活用した「豊田の森のタンブラー」を豊田市のイベントで販売していただいたのですが、地域住民や商工会議所、市役所の方々にすごく好評で、みなさん楽しんで使い捨てしないコップとして使ってくれていました。「SDGs」はビッグワードですが、「地域」に着目し、住民の顔が見える距離でどう実践していくか、考えていくととても楽しみです。人のライフスタイルを楽しく・持続的にできるものであれば、別に飲み物が入らなくて良いとも思っています。

そうなると、例えば、未成年との取り組みなど、アサヒビールとしてやっていくのが難しい案件も出てくると思います。今ちょうど会社が副業を推進しているので、一般社団法人などの団体を作っていくのもありかなと考えています。幸いにも人脈がどんどん増えていますので。
ベースにあるのは、「人に喜んで(楽しんで)もらいたい」という気持ちですが、いろいろな活動を通してアサヒビールのファンを作っていきたいとも考えています。

福間さん:
お互い事業会社なので、利益を生まないと何をやっているの?と言われてしまうのが現実だと思います。ただ、今は社会へ浸透させるための種まきが重要だと思っています。地道な活動を通じて、日本が欧米に劣っている環境関心を少しでも根付かせるようなことができればと思っています。そして、いずれしっかりビジネスとして花を咲かせたいです。

古原さん:
余談ですが、僕も福間さんも島根県松江市の出身です。通っていたテニスクラブも一緒でした。
だから、松江に貢献することをいつかやりたいなと思っています。
松江からも人が羽ばたいているということを知ってもらいたいですし、ポケットマネーで母校に森のタンブラーを送りません?(笑)

福間さん:
ポケットマネー、いいですね(笑)

古原さん:
あとは、日本海側はプラスチックのゴミが多いので、漂流物を回収して何かを作るということもやってみたいです。
海自体が綺麗ですし、島根の活性化のためにできたらいいなと思っています。

<とても素敵ですね!貴重なお話をどうもありがとうございました!>

◆受賞歴
ソーシャルプロダクツアワード2020 生活者審査委員賞(特別賞)
日本パッケージングコンテスト2020 飲料包装部門賞
オルタナ サステナブルセレクション2020 ★★(二つ星)
循環型社会形成推進功労者 環境大臣表彰


 

 

 

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